2019.11.5
「ヒカリノカケラ」、閉幕しました。
 

 
生活することとつくることを一日の中で何度も往復して、目の前の「やらなければならないこと」を片づけてゆく。麦の長さを整えていると雨が降ってきたので洗濯物を寄せにゆき、パンを一口かじっては糸を切り、また一口かじっては糸を束ね、そのうち子どもたちが帰ってきて、それでも手の動きは止めない。一日の作業の後、夕飯の支度をしたら、脱力。食卓の椅子の背もたれに身体を預けて、夜は早くにやってきて...そんな作家の日々。
 
ヒンメリ作家eteläの峯村みなみさんの展示「ヒカリノカケラ」閉幕しました。
会期中、ご来店いただきました皆さま、ご購入いただきました皆さま、ありがとうございました。
この2週間、店内には標本のようなヒンメリがたくさん並びました。実際は箱から出してモビールとして使うのですが、購入後も箱に入れたまま飾っておくひとも多いのは納得できます。理科室や地学室に並べられた標本好きにはたまらないでしょうね。
納品作品は全部で262点。これだけたくさんの作品を1度に見てもらうことができるのは初めてです、と峯村さんもおっしゃっていました。メールをやりとりする時間帯も深夜だったり、早朝だったり、文字通り、寝る間も惜しんで製作してくださったのだと思います。峯村さんにとって、これが集大成ではなく、ここがスタート地点、そんな展示会になったらいいなと思います。
 
峯村さんと夏に出会ってから、何度か打ち合わせをし、そこから展示会まで一気に駆け抜けた感じでしたが、最初は松本と駒ヶ根の往復間、慣れない車の運転も怖いと言っていた峯村さんが回数を重ねるたびに運転にも慣れてきているようで、再来週末は東京までひとりで車を運転して行って帰ってくるとか。ヒンメリによって峯村さんの世界はぐっと広がってゆきますね。今後の活躍も期待します。忙しくはなりますが、たまにはうちにも遊びにきてくださいね。ありがとうございました。
 
 

2019.9.8
「雪戯ビⅡ」、閉幕しました。
 


 
駒ヶ根市在住の沖倉暁子さんが千畳敷カールに積もった雪の結晶を撮った写真展「雪戯ビⅡ」が閉幕しました。今回の写真展は地元の新聞にも載せていただき、この地域に住んでいてもなかなか山へ登ることのない人たちへ千畳敷カールの魅力をひとつ伝えることができたと思います。写真展の感想を書いていただくノートにはたくさんのコメントをいただき、沖倉さんがそれを嬉しそうに眺めている姿が印象的でした。そのノートに書かれているみなさんからの一言一言がこれからの沖倉さんの活動を支える糧になってゆくのだと思います。
 
会期中には沖倉さんと行く、千畳敷カールのツアーのお申し込みも承っていました。ご予約された方は今年の冬、沖倉さんと一緒にロープウェイに乗って雪の結晶の世界へ足を踏み入れます。きっと貴重な経験になるのでしょう。
 
沖倉さん、写真展ありがとうございました。また3日に1回のペースで山に登っているのでしょうか。お気をつけて。
 
 


2019.5.12
前田美絵「土あかり」、閉幕しました。
 

 

 
栃木県茂木、前田美絵さんが 30歳から3年間暮らした土地。 グーグルアースで住所検索すると 前田さんが住む場所は 山の向こうへ抜ける一本道の途中、 それ以上山の方には もう誰も住んでいないような場所。 どうして茂木だったんですか、という問いに、 彼女曰く「たまたま益子に物件がなくて…」
前田さんが栃木に移住を考えたとき 何も考えがなかったといったら嘘だろう。 益子で誰かのもとで働いてみたい、 陶芸の勉強をしてみたい と思い描くものはあったと思う。 けれど、益子には物件がなくて 茂木にはあった。 そういうタイミングだった。 ただそれだけ。 側から見たらゆらゆらと頼りないように見えても 前田さんにとっては、 それが十分の判断基準になってしまうところに 前田さんらしさがあると思う。
多くの作家たちが集う益子で 窯元で働くわけでもなく、 誰かに弟子入りするわけでもなく、 彼女は茂木にひとりで身を置き、 風の流れ、まわりを囲む無作為の緑、 そこに飛び交う虫の多さ、 獣の気配、夜の闇の深さ、 これまで暮らしていた環境との違いに驚きつつも、 その一つ一つを自分の暮らしとして獲得してゆく。 季節の移ろいに身を置いた3年間。 そこで育まれた感性は、 自然の土が持っている 質感や色味を引き出す、 今の作陶スタイルにつながっていると思います。
 
 

 

 
4月20日からはじまった「土あかり」にて 空間演出とワークショップをしてくださった岩本牧子さん。

以前、読んだ本で、そうだ、こういうことだ!と合点した文章があります。

「目の前の何気ない事物を、 あることもないこともできた偶然として発見するとき、 人は驚きとともに『ありがたい』と感じる。 『いま(present)』が、 あるがままで『贈り物(present)』だと実感するのは、 このような瞬間である」。(「数学の贈り物」森田真生著, 2019, p3)

まさに岩本さんの美しいはこのことじゃないかと思う。
なんの変哲もない植物の葉のかたちや虫食いの跡を、 根についた土の色を絡まった小石のかたちを、 偶然な卵の割れ方を、 そのひとつひとつに美しいをみて、掘り起こしてゆく。 ないものとして通り過ぎることもできるし、 あるものとして拾えば世界は美しいと驚きに満ちていて、 心動かされることのありがたさ、 それは僕ら人間に与えられた贈り物のようなもの。
今回の「土あかり」が誰かにとってのpresentになる、 そんなことがあったらうれしく思います。
 
 

 
前田美絵さんにとって 茂木での3年間は うつわづくりの素材を見直す、 土を探る時期だったようです。 自身が扱う素材の土を知る時期。 土を知ることは同時に それを扱う自分自身について知る時期でもある。 自分がどんなことに心動かされて、 喜びを感じて、 表現できるのかを。 これまでの活動を下絵として、 その上にトレース紙をのせ、 下絵をなぞりながら、 ときに修正を加え、削り、 改めて新しい自分の輪郭を描いてゆく。 細い線はやがて面をつくり、 光があたり、影をつくり、 立体としてひとつのかたちが浮き上がってくる。

「以前、農家さんのお手伝いを させていただくことがあって、 大豆の選別という仕事だったんですけれど、 その大豆の色が一つ一つ違って 綺麗だと思ったんですよ。」
前田さんにとって 自然の色へと意識が向かうきっかけとなった エピソードのひとつ。

陶芸家の集まる益子から離れた茂木で 前田さんは生活者として その土地の人々の暮らしの中に入り、 そこから得たものをもとに 自身の製作について深く潜ってゆく。
その話を聞いて僕は、 ミナペルホネンのデザイナー皆川さんが自身の著書の中で 魚市場でアルバイトをしていたときに 魚の鱗の模様や色を観察していた、と 書いているのを思い出しました。 (そういえば前田さんも大学時代は テキスタイルを勉強されていましたね)
皆川さんがそうであったように 前田さんもまた場所を選ばず、 自分の身の回りの世界にときめき、 記憶にとどめ、そこから可能性を見出して、 ものづくりをする人なんだろう。 そんなふうに思いました。


 
2019年4月20日から開催されていた 陶芸家前田美絵さんの「土あかり」が無事閉幕しました。 ご来店いただきました皆様、ありがとうございました。 前田さんの現時点でのすべてを見ていただく機会、 いかがでしたでしょうか? これからの前田さんの活動にもぜひご注目ください。
前田さん、さまざまな“ゆらぎ”をありがとう。
 
今回の空間演出は岩本牧子さん、 フライヤーはデザイナーのhaseさんにご協力いただきました。 おふたりにも感謝を。ありがとう。
 
 
 

2019.3.13
あなたとわたしのスケッチ会 Vol.4 を開催しました。
 

 

 

 

 
 
高遠にある薪釜パン野良屋さんで働きながら、自身の製作活動をされている渡辺望未さん主催のスケッチワークショップを開催しました。
このスケッチの会は参加者が交代でモデルをしながらスケッチをしてゆきます。最初は2分半で、次は3分半、そのあとは4分、ときには鉛筆ではなく水彩画縛りで...など、モデルを交代しながらサクサクとスケッチを進めてゆきます。
「細かく捉えるのが上手なひとと大まかに全体を捉えるのが得意な人がいますね」
「水彩画だと線の描写が少なくなって面や色で描くのでまた鉛筆とは違った雰囲気の仕上がりになりますね」
渡辺さんの講評を挟みながらスケッチは進みます。窓の外には山から風に舞ってきた雪でしょうか、ちらほらと雪がぱらついていました。
参加者の中からは「モデルをやってみると意外と止まっているのって疲れるんですね」という感想も。身体が呼吸している、その揺らぎを実感する静かな時間。たまには大人もこういう時間を使って心と身体の感覚を実感するのもいいのかもしれません。
スケッチが終わるとすべての作品を並べて、全体の講評。同じモデルを並べたときの面白さや、一人の人が描いたスケッチでもスケッチにかけた時間が違うことで少しずつ絵に変化が出てくることの気づきなど、渡辺さんを中心に参加者みんなで感想を共有しました。中には互いの絵を交換しあったり、写真を取り合う参加者の方もいらっしゃいました。最後はみんなでお茶を飲んで解散。
 
今回ワークショップをしてくださった渡辺さんのinstagramはこちら
 
 

2019.2.24
木版画ワークショップを開催しました。
 

 

 

 

 

 
木版画家・沙羅さんによるワークショップを開催しました。
すでに出来上がっている様々な版に水彩絵の具をのせて刷ってゆきます。小学校の頃、白黒の木版画を経験したことがあるひとは多いかもしれませんが、これだけカラフルな木版画を経験できるのは珍しいかもしれません。
使う色にもちょっとした工夫があって、例えば、沙羅さんがあらかじめ用意してくれるパレットには、さりげなく茶色がありません。そのため木を塗る色を何色にしよう?感性の凝り固まってしまった大人からするとすぐに茶色を探して、塗ってしまいがちですが、そこにちょっとした条件を加えることで参加者は沙羅さんの色の世界へと導かれてゆきます。
沙羅さんのワークショップでは「センスが良くなった気がする!」「なんだか自分が思っていた以上に素敵な作品になった!」そんな感想が出るのは実は沙羅さんのそういったひと手間があるからです。ちょっとしたきっかけですが、そうやって知らず知らずのうちに色の世界に没頭してゆく...そして最後は沙羅さんも当の本人も想像できなかったような心動かされる作品ができあがります。それはちょっとしたマジックを見ているような、不思議な体験です。今日も、版から紙をはずして初めて見たときに「わぁー!」という小さな歓声が度々聞こえてきました。
午前クラスは定員制で、午後クラスは自由参加のフリークラスだったので息子と妻も木版画を体験しました。息子はベースとなる木の色を好きな色の黄色で塗っていました。ニヤニヤしながら。僕が幼かった頃に黄レンジャーのヘルメットをかぶってポーズを決めている写真があります。好きな色というのは遺伝するのでしょうか。大人が伸ばしてあげられる子どもの感性なんてきっと限られたことしかできませんが、こういう機会を設けることで少しでも息子の中の何かがワクワクしたらいいなと思います。
 
今回ワークショップをしてくださった沙羅さんのinstagramはこちら
 
 

2019.1.24
「マグとわたし閉幕
 

 
昨年11月からはじまった巡回展「マグとわたし」が先日、閉幕しました。
秋田の学校橋雑貨店さんからはじまり、長野の当店を経由し、最後は東京のブックギャラリーポポタムさんへ。14名の作家さんの合計500点近い作品が巡回し、それぞれの会場でそれぞれの「マグとわたし」の景色が描かれました。
お越しくださいました皆様、ありがとうございました。
 

 
僕らにとっては昨年の7月にオープンしてからはじめての企画展の開催でした。
夏、当店で行なったフライヤー撮影は、大野写真研究室の大野さんご夫妻とこの企画の主宰であるA&C静岡手創り市の名倉さんとで進めました。僕自身こういう場に立ち会うのもはじめての経験だったので、大野さんのカメラの液晶を後ろからのぞいたり、名倉さんのまわりで撮影に使う小物を出したり、引っ込めたり、マグを持って“手タレ”をしたり...そして10月になってデザイナーのhaseさんからあがってきたフライヤーを見て、すごくいいなと。世の中に無数にある仕事の多くは誰かが欠けても、誰かが補って成り立つようにできているけれど、このフライヤーは誰1人欠けてもできなかったものなんじゃないかと、大袈裟でもなんでもなく、素直にそう思いました。
フライヤーは伊那谷の知り合いのお店さん約20店に置かせていただきました。僕個人でもクラフトや手仕事に興味のありそうなひとに1人ずつ手配りして回りましたが、1人の人間ができることって思っている以上に少ない。なかなか配りきれない。だからと言ってそれがやらない理由にもならない。焦らない。思いを持って伝えたものはそれを受け取った人がまた次の人へ自然と伝えてくれる。そういうもの、人間ってそういうもの。ご協力くださいました皆様、ありがとうございました。
 
 

 
会期中はアトリエショップ内に「喫茶Smith」をオープンしました。喫茶Smithでは作家さんのマグを使ってコーヒーが飲めるという“試着”ができました。みなさん、思い思いにマグを選ばれてその使い心地を実感されているようでした。
 
今回の喫茶Smithで印象に残ったシーンで、珈琲を飲むとき、隣り合わせに座った地元の人と遠方からお越しの人が会話をしていることがありました。喫茶Smithの座席は3人がけの長椅子だったり、4人がけの昔に教会で使われていたベンチだったり、バラバラの種類の椅子を一列に並べたりしていたので、空いているところに座ると自然と知らない人同士が隣になります。初対面の人と隣同士になると言っても作家さんのマグで珈琲を飲んでいるという連帯感というか、話のとっかかりがあるので、初めましてでも「その作家さんのマグすてきですよね」や「このマグとそのマグで悩んでます」といった会話がしやすく、そこから、どちらからお越しなんですか?とか、このあたりで美味しいご飯どころありますか?といった会話に発展してゆく。旅をしたことがある人ならわかると思うけれど、なかなか旅先で地元の人と話をすることってない。店員でもなんでもないただの地元のひとと話す経験。珈琲を飲み終わった後、店内のマグを眺めてまわる。まわってたらまたさっきの人と出会って立ち話。最後は一緒にレジに並んでいたりする。きっと遠方から来た人はそういう体験を通して、この土地のことをぐっと身近に感じるんじゃないだろうか。
長野から家に帰ってきて、購入したマグで珈琲を入れてほっと一息をつくときに、初めて会った遠くの街のひとのことを思い出す。名前も連絡先も知らないけれど、なにか親しみとセットになって遠くの出来事が記憶されている。そしてもしかしたら誰かに話してみたくなるのかもしれない、「駒ヶ根っていいところだよ」と。
今回喫茶Smithだけでなく、靴磨きのワークショップだったり、ハーブティをつくるワークショップにも地元のひとと県外のひと(県内だけど遠方のひと)が同席することがあって上のシーンを度々目撃しました。なんてことないことだけれど、こういう些細なことが、田舎で店を持つひとつの意義のような気がします。
(僕が朴訥と話しているせいか、お客さんがお客さんに接客してるシーンもよくあった。心当たりのある皆さま、その節はありがとうございました!こんな店ですがこれからもどうぞよろしく。)
 

 

 
「マグとわたし」が終わってしばらくの間は、お客さんとの会話で「またやってくださいよ」と言われることが度々ありました。うれしいことです、僕もまたやりたい。でもきっとまたやるというのは同じとこを繰り返すのではないというのもわかっている。今回の「マグとわたし」を構成した要素を1回バラバラに解体して、整理し直してみて、そしてまた組み上げたときに1周まわってまた「マグとわたし」になるかもしれないし、全く違うなにかになるかもしれない。
 
今回のこの企画をお声がけくださったA&C静岡手創り市の名倉さん、参加くださった14名の作家さん、灯りを提供くださったrecordさん、カメラマンの大野さん、デザイナーのhaseさん、秋田会場の学校橋雑貨店さん、東京会場のブックギャラリーポポタムさん、ありがとうございました!
こうやってブログをパソコンで書いている僕の傍らには今回購入したマグがあります。山積みの資料やら革小物のサンプルやらが散乱するテーブルの上で安定感のある立ち姿を見せてくれるマグ。中身はお白湯です。やかんで沸かしたお湯を保温できる水筒に入れて、それをマグに注いで飲んでいます。これから使い込んでゆきたいと思います。マグは愛着!